走り出せ、コスモス<前編>



先生は自習室1を覗き込んで、時計を見た

「長い間立ち話させちゃってごめんね」

「全然! 大丈夫!」


そういえば 自習室1の人の邪魔しちゃった

先生との会話に夢中で、気が回らなかった

すみません…


「じゃ」

『バイバイ』…って言うのも

『さようなら』…って言うのも

おかしいような気がして

私は笑って軽く礼をした


先生が階段を降りていく


さっきのことが夢だったみたいに思えてきて

私は階段の横の壁から身を乗り出して

下の先生を見た


いた…先生だ…


現実… だったんだ…!


そして、だんだん視界から消えちゃいそうな 先生を見た


先生が 行っちゃう…


目に焼き付けるように
じっと見ていると

先生が突然 上を向いた


わわ…!

驚いて

私は足を浮かせたまま

先生と視線を重ね合わせた


先生は笑った

そして前を向いて行った



私はそれからしばらくの間

足を浮かせたままでそこを見ていた








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