音色
「なんか、だまされた気分」
「何でふくれてんだよ」
駅まで送りたいと、無理やり翔平についてきた私は、なぜか悔しい気がしていた。
後でフォローする言葉も、考えてあげてたのに。
やっぱり、翔平には勝てない。
「いやー、でも久しぶりにあんな緊張したわ。一対一って意外と難しいんだな」
いつもの飄々(ひょうひょう)とした笑顔で、翔平は独り言のように言う。
「一対一?」
「ああ、司沙も聞いてたから一対二か」
あまり覚えてないけど、とは言わなかった。
「もっと大勢相手のほうが楽なの?」
「まあ慣れてるから…あれ、そういえば言ってなかったな」
何かまずいことを言ってしまったかのように、翔平は視線を少し外に逸らす。
「何が?」
「いや、いいんだいいんだ」
「何?」
そこで、翔平の意外なようで納得のいく一面を、あたしは知ることになった。