意味するもの。その先にあるもの。
   




「やめてくれ。和也。もうやめてくれ。」

取り乱す雄一。
   
「雄一。」

横目に雄一を見る仁。
和也の手が止まる。
雄一の声にその場の全員が注目する。
   
「雄一がしゃべった。」

驚きの表情が隠せない竜也、仁、淳之介。
   
「やめてくれ。」

伏せていた顔をあげる雄一。
その目から流れ落ちる涙。

   
「…横山は僕を庇っているだけ…。」


目は1点を見つめている。
   
「どういうことだ。」

馬乗りになっていた裕から降りる和也。
地べたに寝そべったまま雄一を見つめる裕。
   
「…。」
「どういうことだって聞いてんだよ。」

怒鳴りつける和也。
手元に握られたままのナイフ。
   

「と…とも…智久を殺したのは僕だ。」


自分の両手を見つめる雄一。
焦点の合わない目。
   
「…嘘だろ。なぁ。雄一。」   

動揺を隠せない仁。
   
「…あの日。あの抗争の日。智久はどさくさに紛れながら…襲い掛かってきたんだ。手にはナイフが握られ…僕は必死だった…。ナイフから智久から逃げるのに…。」

目から溢れだす涙。
震えた声。
ただ真っ直ぐどこか遠くを見つめた瞳。





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