意味するもの。その先にあるもの。
   



「嫌ならええねんで。ここにおるんが辛いなら元の場所に戻ればええ。」

穏やかな声に戻る光一。
   

「今更、戻れへんよ。戻れっかよ。」


目を伏せる裕。
   
「戻るためにはどんな方法でもあるで。」
「そんなことしよったらお前が困るやろ?俺の責任はお前がとるんやから。」

光一の言葉に驚き目を丸くする裕。
   
「ええよ。別に。そんなこと気にするなや。」

微笑みかける光一。
   

「それになお前は絶対ここに帰ってくるはずや。」


自信満々に答える。
   
「何やねん。その自信どっからくるねん。」

苦笑する裕。
   

「お前のその不器用な優しさや。大事にしぃや。」


裕に背を向け歩き出す。
薄らと透けていく光一の姿。
目をこする裕。
   
「おい。」

思わず呼び止める。
   
「何ねん?」   

振り返り笑う光一。
跡形もなく消えていく。





< 73 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop