ココアブラウン
電話の音で目が覚めた。

4日ぶりの夫からの連絡だった。

「由香里か?」

「はい、おはようございます」

「美樹が来ただろ?」

「ええ」

「隆太の養育費払ってやってくれ。あいつの会社にもって行けばいい」

「あたしが?」

「お前じゃなくって誰がやるんだ?どうせ休みでひまなんだろ?用件はそれだけだ。相手先しだいで出張が伸びるかもしれないから、家のことはきちんとしておくように。それからそろそろ取引先へのお歳暮も手配しておいてくれ。金額と品物は去年どおりでかまわない」


夫は一方的にまくし立てると電話を切った。

この人は無神経なんだろうか?

前の妻と今の妻が会うことになんの疑問も持たない。

それどころか自分の子供の養育費を今の妻に持たせる。


だけど、言われたことをやらなければ不機嫌になることは目に見えてる。


昨日の出来事はまだあたしの体から出て行ってはいなかった。

夫は新のことを知ったらどうするんだろう?


多分、怒りだ。


普段気にも留めないのに人が同じものを持つと腹が立つもの。

そろってないといらだつもの。



ーせいぜいカフスボタンかピアス。それもそんなにこだわりのないもらい物。ー


あたしはもう一度受話器を取り上げた。


美樹に電話をするために。
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