ココアブラウン
ーあたし、?-


小鼻の横から口角にかけて線が刻まれていた。


深く、くっきりと

ーいつの間に?-

視線を上げると頭頂部に銀色に光る筋が見えた。

思い立って耳の後ろから髪をかきあげた。

白く細い筋が茶色く染めた髪の間で行く筋も銀色に輝いていた。


あたしは焦った。


一本ずつプツリプツリと抜いた。

すべての髪は根元から15センチくらい白く透き通るように髪の色が抜けていた。

毛先にいくに連れて細くコシもない。

色はすっかり抜けているのに髪の先で毛根がゼリーのように球体を作っていた。

あたしは抜いた髪をホーローの洗面台に並べた。

銀色に輝くか細い髪はヒヨヒヨと頼りなげにそよいでいた。

急に腹立だしくなって勢いよく水を流した。

すっかり命を失っているはずなのに毛根はホーローのヘリに貼りついて、流れに逆らわずなびいていた。

コックを最大限にひねって水を強くした。

流されそうになりながらも半白の髪はただ毛根だけを頼りにして生き残った。

あたしは水を止めてティッシュを取り出した。

一本ずつ髪をティッシュにとって捨てた。


ただ捨てられるだけの半白の髪。

細く栄養素も行き渡らない髪。

でも、流されまいと足掻いてた。



あたしが足掻いたら、誰が助けてくれる?
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