愛して欲しいなんて言わない(番外編)
俺はまた
少女に視線を戻した

赤い血色のよい唇を
噛み締めていた

かすかに震えている

冷気が自動ドアの合間から
入ってきているのだろう

俺は立ち上がると
ホテルのボーイを呼ぼうとした

だが先にパーティの手伝いに
来ていた鈴木さんと目が合った

「隼夜さん、旦那様が探しておりましたよ」

「ああ、悪い
頭を冷やしてたんだ」

「まだ喧嘩ですか?
頬が腫れてますよ」

「後継者は愛人の子にしろって
言ったら思いきり殴られた」

「まあ、隼夜さんらしい」

鈴子さんが笑う

「お願いがあるんだ
そこに立ってるの女の子に
何か温かい飲み物を用意してやってくれ
できれば何か羽織るものも」

「わかりました」

「俺は親父のところに戻るから」

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