もう一つの【ゴル裏】〜いつかの公園のベンチで〜
第4章〜再び〜

――とある公園。ここに一つのベンチがある。何の変哲もない普通のベンチ――。



2002年3月9日(土)

この日、僕は大分スポーツ公園総合競技場、通称ビッグアイにいた。

久しぶりに訪れた大分トリニータのホームスタジアム。
待ちに待ったJリーグの開幕戦にやって来たのだ。
第1節の福岡戦を勝利で飾ったトリニータは、今日、ここビッグアイでホーム開幕戦を迎えようとしていた。

僕は福岡戦には仕事の都合で参戦出来なかった。本当は、博多の森球技場に足を運ぶつもりでいたのだが、どうしても得意先との打ち合わせがキャンセル出来ずに休日出勤を余儀なくされた。

(*^^)
「もー、仕事とトリニータとどっちが大切なの?」

しぃちゃんはそう言いながらウキウキと福岡に乗り込んで行った。

(´・ω・`)
(そんなの比べるもんじゃないですよ)

そう言ってやりたいのを我慢して、早朝の大分駅へと送った。

(´・ω・`)
(しぃちゃんは僕の事を「年上の弟」とか思ってたりするんだろうな・・)

しぃちゃんとの仲は順調だ。

僕はと言えば、あの最終戦以来、サッカージャンキーに益々拍車がかかり、最近ではヨーロッパのサッカーまでテレビ観戦するようなクレイジー振りだ。

トリニータの試合の無い間は、僕の部屋でしぃちゃんとテレビでサッカー観戦&お泊りするのが定番となっていた。

(´・ω・`)
(ヨーロッパのサッカーって夜中にあるんです。でも、大人になってごめんなさい)


そんなこんなで、今日が僕にとっての開幕戦だ。レプリカユニも買った。タオルマフラーも持っている。ついでに言うと、しぃちゃんもレプリカを新調した。何でも吉田孝行の背番号が11から9に変わったからだそうだ。

(*^^)
「だってしょうがないじゃん、好きなんだもん」

(´・ω・`)
(この人、怖い位に嘘つきませんよ・・)

と、準備万端で今日の日を迎えた。

しぃちゃんは土曜は午前中まで仕事がある。
今日の待ち合わせはゴール裏と決めていた。

開門を待ち、北口のゲートをくぐると目の前に鮮やかな緑が広がる。

「タタカウバショ」

僕の脳にインプットされる。

2002年が幕を開けようとしていた。

< 28 / 119 >

この作品をシェア

pagetop