秘密にし・て・ね(前編)


「ねえ、彼女は?一緒じゃないの?私と一緒のところ見られて大丈夫?」




佳奈は何とかして話をそらしたかった。




「ああ、さっき社長のところに行くって言ってた」




「そう、彼女初めて見たけど結構可愛いね~。まあ私には負けるけど~」




「まあな、お前と違って料理も上手だし~間違っても黒こげ玉子焼きは出ないな」




「ちょっと~変なこと思い出させないでよ、あれはたまたま焦げちゃっただけじゃない」




佳奈は昔、国崎に作ってやった玉子焼きが黒焦げになってしまったのを思い出していた。




「いや別に焦げてた割には美味しかったけど~」




そんな意地悪な表情の国崎に佳奈は胸をぽかぽか叩いていた。




「もう!意地悪なんだから~!」




クスクスっ国崎は笑いがこみ上げていた。




「笑うな!」




まるで恋人同士のように楽しげに話していた。




そんな二人を影から暗い表情で見ている夏樹の姿など今の佳奈も国崎も知る由はなかった。


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