シロノヒト
プロローグ
気づいたら、ベッドの上だった。

真っ白なシーツ。
真っ白な壁。
真っ白なカーテン。
真っ白な包帯。
真っ白なパジャマ。
真っ白な皮膚。

鬱陶しいほどに、
何もかも真っ白。

頭の中まで真っ白。
あんなにごちゃついていたものが
すべて嘘だったかのように。

いいや、
決して嘘ではないんだ。
成り得ないんだ。
それだけは……。

そんなことを思い巡らせるうちに
右側頭部がズキズキと
疼くように痛み出す。

余りの痛みに身を起こし、
手で痛む箇所を押さえる。
まるで効果はなく、
痛みは増すばかり。

苛々が募る。

その矛先は、
左腕に繋がれた点滴に向けられた。

自分の意思が働くより早く、
訳のわからない声をあげながら
だらりとぶら下がった管を
腕から剥がすように
力任せに引っ張った。

皮膚の奥まで入り込んでいた針が
その衝撃で体外に弾き出される。

ドクッ。
ドクッ。
ドクッ。

左腕から血液が溢れ出す。

紅とは、こういう色だ。
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