突然の出逢い
「はい。お疲れ様でした」

めぐと、別れて廊下に出ようとしたときに

「沙希!
ちょっとまって!!」

何事かとおもって、振り向いてみたら
廊下の端っこから私のところまで誠が必死に走ってきた。

「お~。 誠、お疲れ様。
どうしたの?そんなに急いで…」

「いや… あの…
折り入ってお願いが…」

顔を真赤にしながら言ってきた誠を見て
ピンときた。

「沙奈のこと?
何が知りたいのかなぁ~?
誠君は(笑)」

図星だったらしく、慌てて口をふさごうとしてきた。

「ばっ!
そんな風に言わなくたって良いじゃないかよぉ…」

なんだか、苛められた子犬のような顔をされて
堪えていた笑いが出てしまった。

「あははははは!!
誠 慌てすぎだから!」

ひーひー言いながら笑ってのも落ち着いて

「沙奈の今の現状を聞いてくればいいんでしょ?
その見返りは… 明日のランチで…いつものとこの
スペシャルランチで許してあげる」

「あ…うぅ…
分かりました…」

沙奈の情報となれば、金欠でもいいらしい(笑)

こんなに必死な誠を見るのは、入社して間もないころだなぁ…

あの頃は、誠にも彼女がいて、幸せそうだったのにな…

そんな誠に春が訪れようとしているのに、協力をしないわけには
いかないな。

「とりあえず、明日報告するから。
待っててね」

と言って、誠と別れて沙奈がいる営業部へ向かった。

こんな、誠とのやり取りをあの男が見ていたなんて
知らなかった。
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