あかねいろ

―――――

無言で夕陽を引っ張って行った先はいつもの屋上。


『お前…、、』

はぁーぁとため息の後、方眉さげて苦笑いする大斗。

『やっぱ…ダメ・・・ぽかった…』

今にも涙が落ちそうに瞳をうるうるさせて大斗に話す。

『…―ふぇ…っ…だって…やっぱ…緊張したの…わけ、わかんなくな…っちゃっちゃっ、よ…』

そして…大斗の瞳を見た夕陽…


―ッ


堪えきれずに流れる涙。


『こ…これが…拓、ちゃん…に…対して流す、最後の涙…だ、もんっ…』

たどたどしく強がる。

『はいはい』


必死に堪えているのに大斗がそれに優しく頷くから…

あたしは、力が緩んでしまう…


『うっうッ』

グズグズグズグズと夕陽の泣き声が屋上に響く。

文化祭のざわめきに飲まれて飲まれて…

でも止まらない。


大斗が昔見たことがあると言うあの顔で夕陽は泣き続ける。


大斗の顔を見つめたまま…泣き続ける。


『ばかだ、な…ほんと』

と大斗は少しふんわり笑い、

ポケットに手を突っ込んだままトントントンとゆっくり彼女に近づいて―




チュッ…



夕陽の唇に軽く、キス。



「よしよし」と頭を撫でて、にっこり。


ぽけーっと大斗を見つめる夕陽。


あれ…?

何だ?

キスッ…!!!

わぁっぁあぁぁぁ!!!


『…―っちょっ…っとっっ!!』


ガンッ!!


我に還って驚いた夕陽は勢い余って大斗の足を踏みつけた。

『イッテェなっ!!何すんだよ?!』

『ななっ何したのは大斗でしょ?!!っバカバカ!!』

『お前が悲しそうな顔をするからいけない』

大斗は蹴られた所を擦りながら、何食わね顔でキッパリと言う。

『ちょっと?!大斗は悲しそうな顔をしてる人にはキスする主義なわけ?!』

『ちげえよ』

今度は大斗は少しブスッとして答える。



< 154 / 469 >

この作品をシェア

pagetop