あかねいろ

『えっ?あたしも貰っていいの?』

『はい。改めて仲良くできたらなって…』

夕陽は下を向きながら少し照れて結衣に言う。


『ありがとう』

一瞬焦っていた大斗だったが、その様子を見て優しい笑みを溢した。


『おぃ!!大斗こっち来い』

マスターが大斗を呼ぶ。


『なーにー?』

『大斗久しぶり。』

『あーぁ』

嫌そうな顔をして大斗は拓巳に返事をした。


『アンタね?拓ちゃんは先生なんだよ!敬いなさいよ?』

と夕陽。

『やなこった』


全く…生意気なんだから。


『結衣さん久しぶり♪』

大斗は結衣にはにっこり挨拶。


『拓ちゃん…大斗女グセちょー悪いから気をつけて…』

夕陽がすかさず言った。


『そうか、そりゃ問題だって―…!?お前何してんだよ?!』

大斗は夕陽が拓巳にあげたチョコレートを勝手に開けて食べているではないか…


『バカ大斗!!』

夕陽が怒鳴る。

『小田桐は結衣さんのがあるでしょ?浮気は駄目よ♪俺は女の見方だ♪』

『あんたねぇ?!あたしも女の子だけど?あたしの味方はしないわけ?!』

大斗は「はぁぁ?」と夕陽を見て何も言わずプィッとソッポを向いてしまう。


ムカツク…


拓巳と結衣はクスクス笑っていた。

するとマスターが

『そうそう、これ』

と何かを見せる。


マスターが出した箱には宛名欄に【みんなへ♪】と書いてある。

『夕陽ちゃん、開けてみな』

テープを剥がしていくと…


『あ…』

中にはぎっしり詰め込まれた板チョコ。

数えるのも大変なくらいの量。


その上に一枚の写真

真っ白の雪と街並み


これ…


『咲さん?!』


夕陽は半泣きで、大斗は無言で箱を見つめていた

マスターはただ"そうだよ"と笑っている。

メッセージが無くてもなんとなく咲さんの気持ちが伝わる。


【大好きだよ♪】


なんて素敵なバレンタインデー

あたしは、やっぱり堪えきれず泣いてしまった。




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