あかねいろ

『グズッ…』


あたしは…

気付いたら泣いていた…


『ちょ…夕陽ちゃんっ?!』


咲が目の前で慌てて居るが、夕陽はもう涙が止まらない。


浅はかなのかもしれないけど、誰かに必要とされたことが、どんなチッポケなことだったとしても、嬉しかった。


それに咲さんの言葉はチッポケなんかじゃない…。


『おぃ…お前ら…』

そこに大斗が戻って来て驚いている。


涙で視界が滲む中、大斗は咲の顔を見てから、夕陽の頭をポンポンと叩いて、


『変な女ー』

と眉を下げて静かに言った。

『化け物〜』

と大笑い。


化粧が落ちて大変な事になっている夕陽の顔。


『うっわっ…』


慌てて鏡を見てビックリして涙は止まった。


『超だっせぇ』


なんでかわからないけど、この2人の前だと、涙を止めなきゃという気が起こらなかった。


笑いころげる大斗を見てなんだか夕陽も笑えてきた。

咲は笑いをこらえている。

咲はその姿までも可愛い。


暫くして、夕陽の視界が段々ハッキリ見えてきた。


〜♪〜♪〜♪〜


すると咲の携帯が鳴る。

大きく深呼吸して、夕陽を見て、

『ごめんね』

と片手で謝りながら電話に出る。


夕陽はグズグズの顔をあげた。


『こんばんは。はい♪今駅近くなので、すぐ行きますね』



するともう咲の表情は変わっていた。


ファミレスに来たばかりのフワフワした感じはなくなっている。


彼女の美しい一つ一つの動きに、周りの空気が合わせて色を変える。


女の人として、なんてかっこいい。



これが仕事スタイルの「麻生咲」なんだ、と思った。



夜の闇にも街のネオンの煌めきにも負けない綺麗な人。



『行かなきゃ。ごめんね夕陽ちゃん。泣かせっぱでっ!またゆっくり会おうね』


咲は申し訳なさそうに、仕事でない時のフワフワ顔で小さく笑ってファミレスを出ていった。


それを、ぼーっと見送る夕陽。


大斗は横で煙草をふかしていた。


『お前は素直でいいな』


そう呟いて…


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