あかねいろ

『咲は俺にとったら大事な女だ!!文句あるか?』

夕陽は依然動けず固まって立っている。

『咲の名前を容易く出すな』

『せ、先輩は…咲さんが好きなのに、なんで…夕陽先輩と仲良くするの?今から…夕陽先輩に会うんでしょ?』

『夕陽の事は関係ねぇよ!!』

夕陽に聞こえた大斗の怒鳴り声。



「咲は俺にとったら大事な女だ!!」

「夕陽の事は関係ねぇよ!!」

あたしの事は大斗には関係ない…

関係ない人…

大斗は…そう言った。


あたしの頭の中で大斗の言葉がグルグル回る…

大斗と咲さんの間には…あたしは入れない…

あたしは…関係ない…

どうでもいいってこと…


『俺、人を好きになんてなったことねぇし』


夕陽は下を向く…


あぁ

地面が崩れてく…

ここは…?どこ?

あたしは…どこに居る?

瞳の前が真っ暗…


『昔の事なんて覚えてねぇよ?昨日抱いた女の事も今日には忘れるし』


ねぇ?大斗は昨日誰かを抱いたの…?


『お前なんかもう知らねぇよ?』


フッと…冷たい、冷たい、大斗の笑い。

きっととても冷酷な笑いを浮かべてる…


『俺は思ったまま好きな事をしたいんだ。邪魔するな』


冷たい、冷たい大斗の声だけが…聞こえる。


ガチャ。


扉の開かれる音。


そう、か…

大斗はきっと本来はこんな人…


「すきなこと」

「おもったまま」

「おまえのことなんかもうしらなねぇよ」


きっと…

あたしも…何かの拍子に「わすれた、しらない」と言われる…


本能だけで動く大斗…

求める先にあるのは…

いつも咲さん。


咲さんが居たから保たれていた…

穏やかな大斗の姿。

もう…

咲さんがいないから…


大斗があたしに構うのは…

咲さんの代わり…


知ってた…


わかってた…


そんなの前からわかってた…


やっぱり

「約束」なんて、しなければよかった…



『夕陽先輩?!』


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