あかねいろ

菜穂はそう言うと駆けていった。

廊下に独り残された夕陽。

次第に菜穂の足音が遠退く…



無音の世界…


真っ暗な…


天井も地面もわからない…


そんな

真っ暗な世界が広がった…



――――――


〜♪〜♪〜♪〜


『ひぃちゃん?』

〈…あんちゃん…?教室に居る…?〉

『うん、いるよ♪』

〈あのね…お願いが、あるの…〉

『どしたー?屋上で楽しくお弁当中でしょ♪?』

〈…多分、もうすぐ、きっと…大斗が教室に来ちゃう、かも…と思う…から…〉

『えっ?一緒じゃないの?』

〈うん…。もし来たりしたら、あたし…具合悪くて、…あの…帰ったって言ってくれる?…ゴメン…こんな頼み事…〉

『え?どうしたの…?』

電話越しの酷く沈んだ夕陽の声に杏は驚く。

『佐々原さん?』

その時、夕陽の予想通り杏が呼ばれた。

『あいつ居る?』

声の主はやはり大斗。

『神崎?!』

少し戸惑いながら杏は大斗に返事を返す。

『夕陽は?』

〈やっぱり…ゴメン…大斗に代わって…〉

『…今、電話ひぃちゃんなんだけど…具合悪いって…』

そう言って杏は携帯を大斗に差し出す。

大斗は受け取り、出る。

『お前…どこにいるんだよ?』

〈ゴメン…大斗…〉


はい?


『はぁ?』

〈具合…悪くって…お腹痛い…〉

『腹痛?んで、どこにいる?』

大斗はわけわからず聞き返す。

〈家…帰ってきちゃったの…女の子の日…だから…〉

『はぁ生理痛?大丈夫かよ?』

〈クスッ、そんなあからさまに言わなくても…〉


なんでそんな力無い笑いするんだお前…


『つーか、だったら連絡しろよ?何で勝手に帰るんだよ?』


こいつ絶対、腹痛なんて嘘だ。


少しイライラ気味に大斗はそう思い問う。

〈ごめん…〉

『お前…本当は何なんだ?』


具合が悪い訳じゃないくらいわかる。

お前のその声は何かあった時の声だろ?


〈何にもないよ。お腹痛くて弱っただけ…〉

電話越しの小さな夕陽の声。


ふざけんなよ!!

言いたい事言えよっ?!


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