あかねいろ
『あいつの事…好きだと思ったんだ…だけど、違ったのかもしれない…』
今日は、真夏の風が吹く暖かい夜だった。
『あいつに…夕陽に…俺が他の女の代わりに自分をしてるんだろ?って言われて、よく分かんなくなった…』
『ほう?イケメンは、さすがだな?他の女は前の彼女かなんかか?』
『違う。彼女なんて居た事無い。女なんてやるだけのモノだったし…一人を除いたら…。』
『言うね?さすがイケメンだ。おいしい人生だなぁ?で、その除いた一人ってのの代わりにしてるっ言われたのか?』
『そう…でも、その女を、どう想ってたかすら、全く自分でわかんない…』
『そうか。』
『彼女とかじゃなかったし、そいつが幸せになってくれたら、それで良い。』
『愛、だなぁ…』
やんわりと豊次郎は言った。
小さな神社にはもう人はすっかり居なくなっていた。
「アイ」…なんて、尚更わかんねぇって…。
『でも…夕陽に泣かれて、色々言われて、何かグチャグチャになって、ほんとに何が何なんだか、何にもわかんなくなった』
そう言って煙草に火を点ける。
『夕陽の事…言われたとおり、代わりにしてたのかもしれない。人を好きになった事なんて無いからわかんねぇ…』
『あの可愛い子ちゃんは夕陽ちゃんって言うのか?あの赤ん坊みたいな顔した紅い着物の子だろ?』
大斗は少し怪訝な顔をして
『何でそんな細かく覚えてんだよ…』
と機嫌悪くなって問う。
『あの子の笑顔最高に可愛いかったからね』
豊次郎はまたガハハーと笑い出した。
大斗は一瞬だけ小さく笑い、すぐに曇らす…。
『でも…俺…泣かしてばっか…。』
『夕陽ちゃんの泣き顔は、それもきっと可愛いんだろうなぁ』
『どう、だろ…。けど…俺…あいつの泣く顔見て、嬉しくなった時は…ある。うまく言葉で言えないけど…』
『きっと、それは「愛しい」って想う気持ちだな』
聞きなれない言葉に大斗はぎょっとして豊次郎を見る。
『ちょっと待てよ?!「いとしい」?何だソレ?!』
豊次郎は、ただ…にっこりしている。