PureLOVE〜キセキの確率〜
◎海風に向かって

<海辺>

アコさんの病気は乳ガンだった。


正直、予想はしていたけれど、だからといって簡単に「だからって、関係ないさ、僕はアコさんが好きなんだ」とは言えなかった…

自分のヘタレぶりをリコさんの男前ぶりと比較して、僕はへこんだ。


海風が僕の髪をやさしく撫でる。


痛い程の寒さの中、僕は海辺に立ち尽くしていた。


それで何かが解決する訳でも改善される訳でもない、無意味といえば全くその通りの行為。


僕は立ち上がったあと、走って手術室へ向かうリコさんを背に、病院を出て海まで走った。


海まで走るなんて…青春まる出し感が恥ずかしい。


とりあえず僕は今の状況を整理してみた。

今日、アコさんは乳ガンの手術。

双子のリコさんは僕に、アコさんに会いにくるようしむけた。

しかし(たぶん)予想とはあまりにも違うヘタレ中学生だったため、追い返した。


じゃあ僕が大学生の兄、晋也だったら?本物だったら?

どうするつもりだったのだろう…わからない、少なくともアコさんに会わせてくれたのかな。


「あーわっかんねー」

僕は海に向かって叫ぶとゆう、きっとこのテンションじゃないときに思い出すと、一日布団の中で寝込みたいくらい恥ずかしいことをした。


でも…

僕はしゃがんで浜辺の小石をつかんだ。

羞恥心などどこかへ忘れてきて、そうしなければならないときがある。

たぶん…僕らの、あまり平坦ではない人生では…幾度も…


僕はリコさんの表情を思い出していた。


一体僕に何を期待し、失望したのか…

僕は浜辺に座り、海のうねりと、寄せては返す波の動きをひたすらを見ていた。

< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop