魔王さま100分の1

「ええい、立てっ、立てっ、立てっ」

魔王さまは、先に立ち上がってシルキスを蹴っ飛ばす。

重傷なところに本気蹴りなので、本当に痛い。

「立ちます、立ちます、立ちます。いや、でも、休憩しないと比喩なしで死にそうな気もするのですが」

「その程度の傷で勇者が死ねるかっ、呪いを甘くみるな」

「あ、呪いなんだ、やっぱり……」

シルキスは、のそっと立ち上がった。

「ふんっ、この後のことも考えてあるのだろうな」

「はい、ここから逃げます、駆け落ちです」
「む、駆け落ち」

「はい、好きどうしですから」
「いい響きだ。気に入った、それでいく」

魔王さまは、にーっと笑った。





──魔王さまと涙 終わり


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