銀色メモリー
「ただ、僕の彼女になってくれるだけでいいよ。僕、まだ誰とも付き合ったことないから」
「は?」

 一瞬、彼の言葉がわからず、考えてしまった。

 彼女って、私が彼の?
 涼に似ている彼は、女の子にもモテるはずだ。
 わざわざ私に言わなくても、告白してくる子には不自由していないはず。

「何言ってんの?」
「僕の通っているのは東林高、知っての通り男子校」

 東林間高校は、彼の言った通り、この学区では1つしかない男子校。
 私の通っている聖センチュリアス大学付属高校に近いところにある。
 涼の通っている台祐高校とは位置的に結ぶと三角になる感じで、なにかとこの3校は色々な意味で係わり合いが深い。

 私の聖高と東林高は最寄の駅では逆方向だけど、私の家からは一番近い場所にある。
 
「だからって・・・」
「ダメなら秘密を兄貴に言う。このパスケースを兄貴に見せたらどうなるのかな?」

 そう言いながら、ちらりらと私のパスケースを見せる。
 いまさら涼にこのことを知られたくはないけれど、だからと言ってこんなふうにされて言いなりにはなれない。

「涼の弟で、東林高に通っているってことは、高1、高2?」
「年なんて関係ないでしょ。ようは精神年齢がいくつかってことが大切なんじゃない?」

 正論のようなことを言っているけど、私には彼の精神年齢が高いかどうかなんて判らない。
 彼の事は何も知らないんだし。

「高1」

 何も言わない私に諦めたのか、彼は素直に答える。

「私、あなたのこと、何も知らないし・・・」
「これから知ったら?」

 そうあっさり返されて、ため息がこぼれる。

「自転車にまたがったままいないで、ちゃんとベンチに座って、落ち着いて話さない?」

 断るとしても、相手はとても手ごわそうに感じ、私はその提案を受けて、自転車から降りた。

 高1でこんなことを言い出せるんだから、確かに彼の精神年齢は高いのかもしれない。
 確かに実際の年齢なんて、意味を持たないこともある。

 でも、私は・・・・・・。

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