だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「谷田陸は?」

「無事に、家まで送り届けました。
大丈夫。
お母様からの苦言もありませんでしたよ」

「あの、二人は?」

「それも大丈夫です。
きちんとこちらに連れて来て、紫馬さんが治療されてます」

「パパが?」

「ええ。逢いに行きますか?」

お兄ちゃんに誘われるままに頷いて、ベッドから降りる。
荒縄の後がついた手首には、薬が塗ってあるのかガーゼが巻かれていた。

気づけば、服もフリースのパジャマに着替えさせられていた。

「服、着替えてもいい?」

「どうぞ。外で待っておきますね」

そういう気遣いがパパとは違うわ。
わたしは、デニム素材のロングスカートと、ふわっとしたベージュのドルマンタイプのニットセーターに着替え、廊下に出た。

くしゃりとお兄ちゃんが頭を撫でてくれるのが、何故だかとても懐かしく心地良い気がして、その腕にまとわりつく。
そうしていないと、不安で仕方が無いから。

お兄ちゃんは分かっているのか、恋人同士がそうするようにぎゅっと手を握ってくれた。

廊下の端へと歩いていく。

「あれ、この離れって小川くんが居るところじゃないの?」

お兄ちゃんの友達が、療養している部屋だ。

「そうですよ。小川に面倒を見てもらおうかと思っているんです」

お兄ちゃんはにこりと微笑んで頷いた。
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