だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
7.お兄ちゃんは甘すぎるのよ
「ちょっと、清水っ」

狭い路地をわたしの手を引いて清水がさくさく歩いていく。

「都さん。良い子にしてないと、担いでいきますよ?」

振り向きもせずにそう言った。
冗談めいた口調だけど、この人は本当に躊躇いもせずにそうするだろう。

ふぅ、とため息をついて引きずられるままについていった。
路地の向こうに、シルバーの軽自動車。

「どうぞ」

まるで、高級車のドアを開けるように清水がその軽のドアを開けてくれる。
誘われるままに、いつもの車よりずっとクッションの悪い、小さな車に乗り込んだ。

清水が運転席に座る。

「……な、なんで?」

軽自動車も珍しければ、清水が運転する姿なんて見たことがない。
そういえば、いつもスーツ姿なのに今日はジーンズにざっくりしたセーター。
その上、ダウンコート。

「だって、目立つじゃないですか」

涼しい顔で言って、エンジンをかける。
この人、フツーに運転できたんだ。

初めて見る上手な運転姿にわたしは目を丸くしながら、頭を一生懸命回転させた。

「誰の目を避けてるの?」

目立ちたくない、ということは隠れたいということに他ならない。

関東随一の暴力団である銀組が何かを避けなきゃいけないとしたら、これは。
……わたしみたいな子供が頭を巡らせるくらいじゃ、どうなることでもない、ということだ。

ふと、脳裏に今朝のお兄ちゃんの表情が甦る。

あの時、もっと真剣に話を聞いておけばよかったかしら?
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