だって好きなんだもん！（Melty Kiss バレンタインver.）

10.おとなとこどもの狭間

涙ぐみそうになるわたしから、少し視線を逸らし、それからいつものようににかっと谷田陸が笑って見せた。

「とりあえず、大通りに出ればなんとかなるって。
ほら」

差し出された手も傷だらけだった。
そうして、差し出すわたしの手も。

「なんだか、仕事したぁって感じだよね」

よく分からないけど、テレビで聞きかじった大人の台詞を口にする。

「そうだなー。頑張ったよ、俺たち」

頑張るだけで許されるのは子供。
大人は、結果が出ないと頑張ったことも帳消しになる。

いつか、そう聞いたことがある。

だから、多分。
今の私たちは許されるんだと自分に言い聞かせながら、谷田陸の手を握る。

落ち着いたわたしに、すった手の甲の痛みがようやく伝わってきたが、それよりずっと谷田の手が暖かいことの方が重要だったの。

「ねぇ、ここ、どこなのかな？
寒いね」
「大丈夫だって、大通りに出れば」

そんな言葉をぐるぐると交わす。
何度も何度も、何度も。

大通りに出ても、車の通りが激しくなっただけでここがどこか分からないことに変わりはなくて。



二人して途方に暮れ始めた頃、

「谷田っ、八色っ」

空から名前が降ってきた。