━Holic━

追憶の夜




━━ユキ━━



それは、一年前の記憶。




くしゃくしゃになった真っ白いシーツ。

そこに寝転がる、心も体も空っぽなあたし。

色を失った瞳で、ぼーっと天井を見つめる。腰の辺りに鈍い痛みが残り、起き上がるのがダルい。



ゆらゆら。隣では煙草の細い煙が宙に上りあっけなく消えていった。


あの煙のように、簡単に消えてしまえたらどんなに楽だろう。





『ナツキぃー』


隣でだらしなく手足を放り投げていた男が、甘えた声を出しすり寄ってくる。

…気持ち悪い。むかつく。




『気持ちよくなかった』

『は……?』


いかにも不機嫌な声で言ってやる。

ばかみたいにぽかーんとした表情。口が半開き。笑えてくるわ。




『あんた、全然気持ちよくなかった。下手なんじゃないの?』

『なっ…!ごめんな?ナツキ。今度からは気をつけるよ』


頭にキたみたいだったけど、本音を必死に押し殺しなんとか笑顔を浮かべる。

そりゃそうだ。
このあたしに逆らえるわけがないもの。




『あー…いいよ。別に気をつけなくても。あたしもうあんた飽きてきたしなぁ…指名しないから』

『なんでだよ?!なにが気にいらないの?直すから言ってよ?俺には…ナツキが必要なんだ』


あたしが、じゃないでしょ?

あんたが本当に必要なのは、あたしのお金でしょう?



男の声に耳を貸さず、落ちていた服を広い集めさっさと着替える。

その間も男はあたしを引き留めようと必死。うるさいなぁ…こいつ。




『うざいわねぇ!あんたみたいなばかホストと一緒だと疲れるのっ!べたべたべたべた気持ちわりーんだよ!!』


サングラスをかけ男をキッと睨みつけ、転がっていたカバンを乱暴に掴む。

薄暗いこの空間から出ようと、ドアに手をかけたときすごい力で腕を捕らえられた。





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