極上な恋をセンパイと。

オフィスに入ると、すでに真山くんと時東課長がいて。
それからコーヒーを片手に、柘植さんがニコリと微笑んだ。


「渚ちゃん、おはよ」

「おはようございます、渚さん。……て、あれ?どうしたんスかその顔」


驚いたように目を瞬かせた真山くん。


「……別に。 おはようございます」


自分でも驚くくらいの低い声。
デスクに鞄を置いて、落ちるように椅子に座った。


真山くんのせいじゃない。

だって、あの時はセンパイが勝手に帰っちゃったんだもん。
真山くんたちを置いて。

それでもなぜか白鳥百合に目をつけられてしまった。


パソコンのスイッチを起動させながら、またひとつため息が零れた。




「おはよう。朝からため息なんて、二日酔い?」


え?

目の前に淹れたてのコーヒーが差し出された。

ハッとして顔を上げると、それは時東課長で……。



「あ、ありがとうございます!すみません、課長に淹れてもらって……」

「いいよ、これくらい。いつも佐伯には美味しいコーヒー淹れてもらってるから」

「課長……」



ニコリと微笑まれ、その優しい笑顔に胸の中がじわりとあたたかくなる。

ほんと。課長には癒されるな……。
重たかった気持ち、少し楽になったかも。

それにしても、時東課長の顔……やっぱり似てるんだよね。

キレイ目にセットされた黒髪。
清潔感のある時東課長。
細いメガネの奥には、黒目がちの切れ長の瞳。

そのどれもが整っていて、素敵。


「俺の顔、なにかついてるかな?」

「え?あ、いえっ、コーヒー美味しいなって」


不思議そうに首を捻った課長。
マジマジと観察してしまった事、失礼だったよね。
赤くなった頬を隠すように慌てて俯いた。

と、その時。


「ああ、久遠君。おはよう」

「っ」



センパイ……。

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