桜が咲いたら
あたしは、夢の中でうなされていた。

「…香ちゃん!有香ちゃん!」

ハッ…

あたしは、目を覚ました。

彼は、心配そうな顔をして

あたしの顔を覗き込む。

「大丈夫?随分、うなされてたみたいだけど…」

「大…丈夫…」

額は、汗でぬれていた。

「寝れるまで、俺がついててやろっか」

「いいです」

「ついててやるよー」

彼は、笑いながら言っている。

冗談のつもりだったのだろう。

「いいって言ってるでしょ!」

あたしの大きな声が

病室に響き渡る。

「冗…談だよ」

彼の顔は…

今まで1度も見たことのない

顔だった。

彼は、病室を出て行き

静かな1人部屋の病室には

あたし1人が残っていた。
< 15 / 50 >

この作品をシェア

pagetop