ハッピー☆ハネムーン

ジジ…

小さな音を立てて、ファスナーは上がっていく。


ジジジ・・・――


肩甲骨の辺りでなぜか慶介の手が止まった。
まさか、上がらないなんて事…ないよね?

ちゃんと試着して買ったもん!!



「慶介?」



一向に手を動かさない慶介。
あたしの声に、少しだけその手が震えたような気がした。


「……こうゆうの着るんだな」


そう言って、最後までファスナーを上げきると慶介はそう言った。


「似合うよ。 すごく」

「……」


ドキッとして振り返ると、あたしと目が合った慶介が口角を上げた。


「ちゃんと女っぽい」


そう言って、楽しそうに笑う慶介。


「…なッ!?」


もぉ! 女っっぽいってどぉゆう事よ!!

あたし女だもん!!!


頬をプウっと膨らませて、慶介を睨む。
そんなあたしを見て、慶介は顎をクイッと動かして時計を差した。


「いいのか? 時間」

「ぎゃ! そうだった!! アイロンアイロン~」



ちょっといい雰囲気だったのに!

ほんと…慶介ってなに考えてるんだろう。








なんとか時間に間に合って、ウェルカム・フラで歓迎されながら、あたし達は大きな客船に乗り込んだ。

ほとんどがカップルで、みんな新婚旅行で訪れているんだろう。


『Congratulation!!』


と、祝福の言葉を陽気なクルー達から貰ってあたしの頬がピンクに染まっちゃう。


「…なんか照れるね」

「そうだな」


白いテーブルクロスの上には、カラフルな花が飾られている。
聞こえてくる音楽も、陽気で…あたしの胸はドキドキとときめいた。


サンセット……

本当に、綺麗な夕日があたし達の乗る船をオレンジ色に変えていた。

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