ハッピー☆ハネムーン

大きなベランダの窓からは、丸い大きな満月が覗いている。
風の静かな海は、まるで鏡のようにもう1つ大きな月を照らしていた。


月の光を背中に浴びて、あたしの足元には長い影をつくっていて。
その影は慶介の顔にまで伸びていた。


オレンジの優しい光と、月の儚げな青い光。


あたし達は、そんな幻想的な光のコントラストの中にいた。




「本当はいつも思ってた。
毎日、毎日、お前が足りない。
……抱きたいって。

でも。もし、その欲望のまま抱いたりなんかしたら、自分を抑えきれるか自信なくて……あえてブレーキかけてた。

そのことで逆に葵を不安にさせてたんだな。
 悪かった……ごめんな」



そう言ってあたしを見つめる慶介。
なんだかすごく愛しく感じた。



この不思議な空間のせいだろうか?


いつも余裕たっぷりで……
いつもあたしを子供扱いして……

キス1つであたしをアイスみたいにトロトロに溶かしちゃう慶介。


その慶介が、そんな事を考えていたなんて……




どうしよう……

嬉しいよ……
あたしだけじゃなかったんだ。

好きで、好きすぎてどうしよもなくなっちゃう気持ち。



あたしだけじゃ……なかった。



「慶介……」



あたしは慶介の手を引いた。
そして、瞬きを繰り返す慶介の瞳を見上げながら、あたしはその首にそっと手をまわす。




――言える。


今なら、あたし……きっと素直に言える。




「……あたしをちゃんと慶介の色で染めて?
どこから見ても、慶介のモノだってわかるくらい。

あたしも慶介が足りないよ。
もっと欲しい……」






慶介の
お嫁さんだってわかるくらいに……


「えへへ」と笑うあたしに、慶介は目を見開いた。


小さく息を吸い込んだ慶介。




でもね?


あたし……ほんとにそう思ってるんだ。





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