マイワールド
そう言う私も、吉岡に賛成だ。

もともと、絵は得意ではない。

それなのに、ひたすら書き続けるのは辛い。

部活の唯一の楽しみといったら、
他の部の練習を窓越しに見ていることぐらいだ。

これでは時間がもったいない。

他にやりたいことはいくらでもあるのだ。

合わない部に所属しているなんて、
本当は良くないことなのだろうが、やめたら入試に影響してしまうらしい。


高校入試とは変なものだ。

部活は趣味であるはずなのに、
その趣味を続けるか続けないかで人間性を評価されてしまう。

それに、『合わない部をやめる』というのはむしろプラスの評価をするべきではないか。

自分の大切な時間を無駄にしないための適切な判断だ。

「くだらねぇ。」

吉岡が鼻で笑った。

「しょうがないって。」

私はまた嘘の顔を作った。

「ところで、おまえはどっち見に行くんだよ?」

「何が?」

「サッカー部と吹奏楽部。

試合もコンクールも同じ日だぞ。」

「え?」

それは知らなかった。

「嘘?

いつ?」

「八月二日だよ。

友達を取る?

恋人を取る?

さぁ、相川さんはどうしますか?」

吉岡が歯を見せてからかってきた。

「知らないよ!

そんなの、その時になったら決めるから!」

「残り時間少ないけど。」

「……。

まぁ、少なくとも吉岡が心配することじゃないから大丈夫だよ。

安心して。」

私はそう言って、彼を突き放した。
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