マイワールド

28

「中栄、今日からライオンが入る。

担当はおまえだ。」

「えっ?

ライオン?

俺ですか?」

「あぁ。

猛獣は初めてだよな?」

「あっ、はい。」

「まぁ、頑張ってくれ。」

「はい。」

――全てはこの時に始まったのかもしれない。

この時辞めていたら……。

俺にはこの仕事は向いていなかった。

いや、長い目で見れば、『そのはずだった』……。


中栄はライオンの檻に入った。

「今日からこんな狭い所で過ごしてもらうのか。

同情するよ。

悪いな。」

中栄はライオンに話し掛けた。

「アォー。」

そのライオンは悲しげな声をあげた。


『ネイル』。

これがこのメスライオンの名前だった。

「『爪』か……。」

中栄はそうつぶやいた後、
ネイルに肉をあげた。

「いろんな意味でよろしく。」

――こうして、俺とネイルは出会った。
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