ショートショートの林
「圧迫面接」
「失礼しまーっす」

友近商事の人事課課長である山田太郎は入ってきた若者を見て顔をしかめた。

愚にもつかないようなプリントが入ったTシャツに、ダメージ加工とかいっただろうか

半ば破れたような汚らしいジーンズ。

一流と言うつもりはないがそれなりに誇りを持って働いているこの会社が、こういった輩に

受験されたという事実だけでも、彼に大きな溜息をつかせる理由としては十分だった。

「えっとー」

後ろ手で入り口のドアを閉める彼を睨み付け、それでも出来る限り平静を保って山田は言った。

「早く席につきなさい!」

「あ、いや、お構いなく……」

「早く!」

山田の迫力に圧されて、若者は尻餅をつくように椅子に腰を落とす。

「さて、君ね、まず最初に言っておくけど、どの道不合格ですよ。それを踏まえた上で良く聞きなさい。君はこのままだとどんな企業を志望しても決して受かりはしないでしょう…マニュアル通りにしか出来ない昨今の連中にもうんざりだが君のようにマニュアルを知ることすらせずにやってくるような非常識な人間は論外だ。格好、行動、言葉遣い、どれも会社に入ろうという人間のそれではない。社会人として働く以上は、どんなに君達が『社会の歯車になりたくない』などという世迷言をいったところで多かれ少なかれ何かしらの仕組みには組み込まれるように出来ているんだ!何も君だけじゃないさ、君みたいな連中は世の中にたくさんいるだろう!でもね!」

山田は口から泡を飛ばし、自分の言葉にヒートアップしてどんどんと語調を強める。

若者は困ったような顔をして、頭を掻いている。

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