身代わり姫
どうしよう。レオノーラは手の痛みに耐えながら、焦る頭で考えました。

妖精の生まれる場所は絶対言わないと、一生秘密にすると約束したのです。

その約束を破る訳にはいきません。


でも、目の前のグラディス王女は、言わないと許してくれそうにありません。


どうしたらいいの!


おろおろとしたレオノーラの瞳と、さっきから黙って様子を眺めていたパメラの視線が合いました。


パメラ様、助けて……。


パメラの唇が動いたかと思うと、レオノーラの耳元で囁くように、パメラの声がしました。


『適当にでっち上げな。妖精なんてそうそう会えるもんじゃないと分かれば、諦めるさ』


パメラがぱちりとウィンクしました。


「……妖精に出会ったのは、私の住んでいた山の中です」


レオノーラは嘘をつく罪悪感を感じ、グラディス王女から視線を逸らして言いました。


「山の中? ココアの領地にある山よね。山の、どの辺り?」


グラディス王女が真剣な顔で問い詰めます。


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