身代わり姫
そのままパメラからも引き離され、レオノーラはグラディス王女の身代わりとして、仕立て上げられたのでした。


身代わり姫の話は王宮の重大な秘密となり、婚礼の支度は静かに、けれども大急ぎで進められ、そして今に至るのです。


レオノーラはずずっと鼻をすすって、目尻の涙を手の甲で拭いました。


「グラディス王女は、そんな下品な仕草はなさりません」


レオノーラの向かいに座った女性が、ぴしりと言いました。


「……あ、はい。申し訳ありません」


レオノーラは慌てて頭を下げました。
それを見た女性は、大仰に溜め息をついて、そして氷のような冷たい声音で言いました。


「この素晴らしい婚礼支度は、全てグラディス王女様のものでしたのに。
それを、どこの馬の骨とも判らないような卑しい娘を、身代わりに立てなければならないなんて」


細く尖った顎に、神経質そうな瞳。きつく結われて一筋の乱れもない髪のこの女性は、グラディス王女の乳母でした。

乳母シエラは、静かに怒りを湛えた視線を、不躾にレオノーラにぶつけました。


「せめて、グラディス王女の名を汚さないようになされませ、身代わり姫」


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