海よりも深い
「ごめんな急に教室来て」
本当に悪そうに拓海が顔の前で手を合わせる
「いや、全然かまわねーよ何もしてなかったし」
だいたい分かってたけど一応用件を聞いてみた
「なー、春夜休みだけどどしたの?」
予想通りの拓海の質問だった
それでも、いくら春夜が滅多に休まなくても俺に休んだ理由を聞きに来たのは初めてだ
「風邪。昨日熱あったから休んでるんだと思う」
なるべく自然に言ったつもりだったけど、拓海は鋭く突っ込んできた
「思う、って なっちゃん今日春夜に会ってねーの?」

う・・・

言い詰まった俺に拓海が何か察したように俺の顔をのぞき込んだ
「なっちゃん、春夜となんかあった?」
―――こいつエスパーかよ・・・

「しょーがねーいじめっ子だな~あいつも」

やれやれ、な感じの拓海に何も言えないでいると、昼休みが終わるチャイムが鳴った
「俺今から春夜の見舞い行くから、なっちゃん何があったか知らねーけど気にしないで午後の授業受けろよ?」

「って、え?サボるのか?!」

既に階段を降り始めた拓海を呼び止めたけど振り返って「だいじょーぶ」と、何がどう大丈夫かわからない返事をしてそのまま行ってしまった
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