精神安定剤
仕事に行くと、目の腫れている明海の顔を見て、


「男となんかあったな。」


など、冷やかすものもいたが、明海は、そんな人達をひたすら無視し、一日を過ごした。



昨日の今日で、木村の顔を見ることが出来ず、ずっと木村に背を向けて仕事をした。
 



木村と別れて一週間、その間、明海は、仕事で嫌な事があっても、木村のことを思い出し悲しくなっても、素直にその気持ちを、言える相手がいなかった。



そんな気持ちを何処にぶつけ、何処に閉まって、気持ちを切り替えればいいのか、方法がわからず、どんどんと自分を追い詰めていった。



そして、精神が不安定な日が、増えていき、仕事にも力が出なく、目も死んでいた。



そう、生気が何者かに、吸い取られているように周りからは見えていた。



ボーっと仕事をいていたと思ったら、いきなり強く机を叩き立ち上がるなど、周りを驚かす行動も増えてきた。



そんな明海を見て、木村は手をさし伸べようと何度もしたが、今手を貸したら、また、今までのような関係に戻ってしまいそうで、何もすることが出来なかった。



木村は、明海の存在がうっとうしくなって別れたのだから、元の関係に戻ることだけは避けたかったのだ。



一度は、愛した女だからこそ、木村は、自分がいなくても、明海にはもっと、強くなってほしかったのだ。
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