【短編】こんな恋もありでしょ。
「お前……いい加減にしろよ?」
視線とは別の方から聞こえた声に、顔を向けた。
だけどそこには誰も居なくて。
ふと視線を下ろすと、しゃがみ込み肩で息をする姿が目に入る。
「那央(ナオ)、遅い」
「はぁ!? 俺走って来たっつぅの!」
「あたし、今すぐって言ったじゃん」
「だーかーらーぁ、今すぐ来たって」
「あたし待ったもん。だから遅い」
「ぬぁ!?……お前、ほっんま可愛くねぇっ。
そりゃ男に、いっつも振られるわ。
顔だけ良くても……
って、嘘だって。嘘っ!」
呆れた顔をしていた那央の顔が、一気に焦り出す。
それは、まぁ、当たり前の事。
那央の目に傘の先を向けて、尚且つおもっきり睨んでいる、あたしがいるんだから。