氷の女王に愛の手を

約束


大会も終わり、ホテルへの帰路につく。


衣装やスケート靴などの荷物は先にコーチが車で運んでくれたから、手ぶらでラクラク帰れる。


て、あれ? よーく考えたら、荷物と一緒に車に乗っけてってもらえば良かったんじゃ……。


まあでも、あの時のコーチはかなりご立腹だったから、仮に頼んでも聞こえないふりをしただろう。


ジャンプミスがあった時のためのリカバー方法はあらかじめ用意していたが、それを無視して3-3-3なんかやったりしたから、バックヤードでぐちぐちとずっと説教されていたのだ。


お前はなんで俺の言うことを聞かないんだ。とか。


成功したから良かったものの、コケたら表彰台は完全に無理だったんだぞ。とか。


挙句の果てに、今度俺を煩わせるようなことをしたら縁を切る。なんて脅してきたり、演技よりもコーチの相手をしている方に疲れてしまった。


変なところが子供なんだから。


もちろん俺も悪いんだけど。


会場の外にはマスコミやら観客やらがまだ残っているらしく、裏口からこっそり抜け出すよう指示されたため、お言葉通りに裏口から会場を後にした。
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