君とはじめて。〜契約恋愛〜
契約
パーティーは順調に行われていた。
ずぐに椎也も会場に戻って辺りを見回した。
……――あいつ、どこにいる…―?
まるで探しているかのようにキョロキョロ見渡す椎也。
気になるのも無理はない。
泣いた後だ…
もしかしたら家に帰ったのかもしれない…
そう思った時だった。
……―!
――…いたっ!
……――ドクン、
彼女の光景に思わず目を丸くしてしまった。
目の前にいるさっきまでの彼女はまるで別人かのような、施しぶり。
泣いていた跡なんて、何もないくらいの装いでたくさんの有名企業の代表の人といつもの何食わぬ笑顔で話しているからだ。
(…―嘘だろ?
さっきまではまるで死んだような目で泣いていたのに…)
…―強い。
そう思った。
あんな無理やりなキスの跡。
感情のない涙の後だ、辛いに決まってる。
それを彼女はなにも無かったかのような振る舞いで場の雰囲気までにも気を遣っていたのだ。
……ただの箱入りお嬢様じゃない…―。
完全なる大人の女。
―――ドクン、
…―ああ、まただ。
この感覚…。
少しの間、椎也は遠くから隠れるように奈緒を見つめていた。