ロマンス@南国
 あたしは銀座でクラブのママをやる以上、それ相応の贅沢をしていた。


 道理で、自分に金銭感覚がないのも頷ける。


 それに比べれば、歌舞伎町でホストをやっている喬は給料が少ないので、あたしなんかよりも全然生活感があった。


 あたしは去年のクリスマスに彼に半袖と長袖の二種類のシャツをプレゼントした。


 もちろん喬がホストなので、上着の下に着るアンダーシャツにと思って、だ。


 ブランド物のシャツを丸々十枚手渡され、彼は当惑したようだった。


 だが、慢性的な金余り状態が続いているあたしにとってみれば、この程度のプレゼントなど小銭を出すぐらいな感覚だ。


 あたしは今から二十年ほど前に、銀座で働き始めた。


 当時は一九八〇年代で、あたしは秋田の田舎から東京に出てきて、水商売をし出したのだ。


 あたしは最初、新宿区でも外れにある小さなマンションに住んでいた。


 その当時のお金で家賃が十万程度だったと記憶している。

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