紺碧の地図

「…できないね。第一お前らの船は、十分すぎるほど裕福に見える」


ゼンの、言う通りだった。


綺麗な黄金色に装飾された船は、見るからにお金を持ってそうな雰囲気を纏っている。



ゼンの言葉が気に障ったのか、敵の船長は舌打ちをした。


「確かに、オレらには金は有り余るほどあった。…だがなぁ、奪われたんだよ」


「…奪われた?」


奪う立場の"ラー"が、逆に奪われた…?


ゼンも不審に思ったのか、眉をひそめて訊き返す。


「信じられねぇが、オレたちと同じ"ラー"に、だ」


"ラー"同士が衝突するのは、決して珍しいことじゃない。


でも、ずる賢い"ラー"は、自分たちより弱い者を狙う場合がほとんど。


この世界には、"ラー"の数が"ルナ"より圧倒的に多い。


だから稀に、生活に不十分になった"ラー"同士が、海の上で大規模な戦いを起こすことがある。


「…なら何故、船は無事なんだ」


確かに、船も大きな価値を持ってそうなのに…。



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