我がままな王子
■ 発端

「ヤバイ!今日当てられるよ!」

次の数学の時間、小山先生の授業
はまず、教科書の問題をその日の
日付に従って出席番号にあてはめ
る。

今日は13日でバッチリ私
佐々木由比が当てられる日だった!

どうしよう…数学なんて、一番苦
手中の苦手だ。

助けを求めるべく、中学からの友
達の智香を見ると、諦めろと言わ
んばかりにふるふると首を振られ
た。


小山は機嫌が悪いとネチネチと説
教するので、できればそれは回避
したい。


しかも一番イヤなのは、できるま
で黒板に問題を書いて解かせよう
とする事。

みんなの前で恥をかくのはイヤだ…。

と言っても、私の友達で数学がで
きる奴なんていないし…。


おろおろしていると、智香が寄っ
て来た。


「困ってるねぇ…」


その言葉とはうらはらに、楽しそ
うな声にムカッと来る。

「当たり前でしょうが!もおお!!」

八つ当たりだと思ったけど、数学
の教科書を握りしめ、智香に突き
出していた。

「教えてよ智香!」

「無理」

「だろうね…」

一応言ってみたけど、やっぱり無
理か。

あーー諦めるしかないのかなあ…。

「王子に頼んでみたら?」

智香がふと、そう言った。

「へ?王子?」

「うん、王子」

そんな人いたっけ?そもそも王子
って何?

「誰それ」


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