月影

真実の果て

例えば拓真と店を出るのが、あと数分でも違っていたら。


結果は変わっていたのかもしれない。


けれども辿り着く場所は、大して違わなかったろうけど。



「何やもう、ホンマに運命感じるわ。」


本当に、嫌な運命の巡り合わせを感じた気がした。


同じ街で生きているのだから、生活圏内も行動範囲も、そりゃ同じで当然だったろう。


確か先ほども、そんなことを思った気がしたが。


でも無視を決め込むようにあたしは、目を逸らしたのだ。


だってそこには、いけ好かない関西弁の男と共に、今も見えない鎖であたしを繋いでいる男が居たのだから。


目に見えた鎖を巻いていた左手首を、無意識のうちに隠してしまうが。



「レナちゃん、どう思う?
ジルくんさっきからめっちゃ機嫌悪いねんでぇ?」


そこに拓真が居ることだってわかっているだろうに、ギンちゃんはあたしに向け、口を尖らせて見せた。


そりゃあ誕生日にあたしと彩がはち合わせるなんて、彼の機嫌も悪くなるでしょうに、とは言わず、やっぱり無視を決め込んだのだけれど。



「何や、お前らいつの間にか終わっとってんな。」


相変わらず何も答えないあたしに向け、今度はそんな風に彼は、肩をすくめてみせる。


行くぞ、と言ったのはジルだった。


そんな彼を一瞥したギンちゃんは、何故だか口元に笑みを浮かべていた。



「レナちゃんも新しい彼氏と仲良うね。」

< 310 / 403 >

この作品をシェア

pagetop