テディベアは痛みを知らない
…‥・‥…・…‥・‥…



なんでも、やればできた。

勉強は、教科書開いてノートを取ってれば理解できた。

テストで赤点なんか取るはずがない。

料理は、手順を覚えればできた。家事も効率を考えたら楽だった。

スポーツだって、ほかの人に負けたくないって思えばうまくできたし、泳ぐのだって、走るのだって速い。

私は、やればなんでもできて、上手にやれた。

今まで失敗したことなんてないし、人間ができることを、私ができなかったことはなかった。

だから人に持て囃されたし、比例して、嫉妬もされた。

言ってやりたいのは、私がなにかをできたからって、アンタがなにかできない原因や、なにかする邪魔にはならないでしょっていうこと。

さらに言ってやりたいのは、なんでもできるなんでもできるって簡単に言ってくれるけれど、私はそれが自信である反面、不満だ。

だから――こんなこと言っちゃ誰も理解してくれないけど、私はカッターの刃を出す。

かちかち。かちかち。それはおよそ五センチの狂気。そして凶器。

この五センチが、私に不自由をくれる。

痛みをくれる。
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