テディベアは痛みを知らない
小百合は、ベアを棚の空いているところへ座らせると、ドアへ向かった。

その背中へ壮馬は言う。

「小百合。お前の傷は、癒えたのか?」

「……」

「いつでも縫合してやるから。いつでも来いよ。俺はお前の、」

「やほー、いるかーい壮馬? おや、さゆりんもいる」

と、壮馬の声を押し潰す勢いで、森山ユウがドアを開けた。

小百合は、言葉を中断させられた壮馬に、口許だけで笑んでみせる。

「その答えは、またいつかですね」

そして、目の前にいる、頭一個分背の高い森山を見て、苦笑する。

「ユウちゃん、また男子の制服着てるんですか? まあた先生に怒られるよ?」

「ははは、それから逃亡するのも楽しいもんだよ? ああでもっ」

『できた風な』笑顔を浮かべる森山ユウは、突然しなを作った。

「レナちゃんがね、僕が女だって気付かないんだ。ああ、カッコよすぎる僕って罪かな?」

そんな森山を「はは」と笑う小百合。

――を、壮馬は見つめていた。

黒い、黒い、瞳で。

テディベア達と一緒に。
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