短編置き場
彼の心は、体と乖離してはいなかった。

母乳によって満たされるにつれ、彼の心に確かな安堵感が広がっていく。

(むう、なんたる心地。こやつの力はいったいなんだ・・・だめだ、おちる・・・)

優しい眠りの中で、彼は穏やかな大海原を漂うひとつの小船であった。

それは遺伝子が見せた遥かな過去の映像だったのかもしれない。

柔らかな風が空から吹いて、小船を揺らした。

「赤ちゃん、ママだよ。ママはここにいるよ」

         おわり
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