幸せの契約
「失礼します。」


犬居さんが静かに私たちの前に紅茶を置く


「ところで、萩乃宮財閥の御曹子と婚約したんだって?おめでとう。」



「まだ、正式に決まった訳じゃないです。」


牧野はカップを持ち紅茶を一口飲んだ


「決まったも同然じゃないの。こんな屋敷に住んで、何不自由ない使用人付きの生活。
羨ましいわ!」


一恵が目を輝かせた

一緒に居たときから一恵はこうだった

お金には目がない人


「鈴ちゃん。
君を引き取って育ててあげた私たちに、1つくらいお礼をしてくれてもいいんじゃない?」



一恵はズル賢いネズミの様なつり上がった目を細くする


「お礼?」


「今のこの不況で僕たちの生活も苦しくてね。
会社の経営が厳しいんだ。」


牧野は大袈裟に肩を揺らしてため息をついた


「それは…引き取って育てたお礼として、お金をよこせってことですか?」


余りの嫌悪感に私の声にも怒りが混じった
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