幸せの契約
「鈴様は汚れてなどいません。」


耳にかかる熱い吐息

「初めて会った時から鈴様は愛らしく輝いていましたよ?
ですから、ご自分をそんなに下品しないでください。大和様もきっとご理解なさってくださいます。」



体を離して
犬居さんはハンカチでボロボロの私の顔を優しく拭く

「夕食の前にお顔を洗ってサッパリされたらいかがですか?」



私は犬居さんに促されるままバスルームに入った


体をさわると犬居さんの温もりがまだしっかり残っている




犬居さん…


私を汚れてないって言ってくれた…



“大和様もきっとご理解してくださいます。”



犬居さんは


私と大和さんが結婚するのを望んでるの?




私が

一緒にいたいのは大和さんじゃないよ



犬居さんだよ?




やっと止まった涙がまた溢れ出した



私は深く深くバスタブに潜った
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