幸せの契約
ドガッッ!

ガツンッ!ドサッ!



耳をつんざくような轟音が部屋に響いた



「お戯れはおやめください。と申したはずですが…お忘れですか?
矢倉様?」


視線の先にはあり得ない光景


静かにたたずむ私の執事



「い…ぬいさん!?」


「バトラーが何のようだ!?俺に指図する気か?」



矢倉くんの張り上げたつもりの声には焦りが滲んでいた


「私、萩乃宮家の者です。主人を迎えに参りました。」



ツカツカとベッドに近づく犬居さん


「なっ!勝手に近づいてんじゃねぇっ!」



飛びかかる矢倉くんに犬居さんが軽く触った


トンッ


と音と共に壁に吹っ飛び激突する矢倉くん


「ガハッ…!」

ズルッと力無く床に崩れ落ちる矢倉くんを尻目に犬居さんは優しく私の拘束を解く



「遅くなって申し訳ありません。」

さっと上着を私に掛ける

拘束の跡が残る私を見て
悲しげに悔しさを滲ませて言う



「犬居さんっ!」


温かな胸に飛び込む
堪えていた恐怖が涙となって溢れだす


優しく背中に回される手


この腕の中には何の不安もない


安堵でゆっくり意識が遠退いていく



そのまま私は意識を手放した
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