幸せの契約
イブ前日

私は静香と買い物に出掛けた


「同行する」
ときかない犬居さんを静香の執事・樽見さんが説得して


私たちは郊外のアウトレットモールへ向かった



「クリスマスプレゼントを買うんだもんねぇ―?
愛しの執事さんが居たらサプライズにならないもんなぁ?」


そう
イブ前日にわざわざ静香と出掛けたのは

使用人のみんなにクリスマスプレゼントを買うため


「確かにそうだけど、そのニヤニヤした顔が腹立つぅ!」


静香を睨み付ける


「あははっ!」


そんなのは気にしない様子で立ち並ぶブランドショップに目を配る静香


「で、誰に何を買うかは決まったの?」


「うーん。

運転手の黒木さんにはコートでしょ。

シェフの番場さんには低周波マッサージ機。

由香ちゃんには鏡とポーチ。

犬居さんにはぁ…。」


昨日一晩考えたけど


犬居さんへのプレゼントが思い浮かばなかった


だって
何がほしいかなんて、教えてくれないし

聞けないし…―


なんでも持ってそうなイメージあるしなぁ


「ねぇ、樽見さん。」

黒ぶち眼鏡をかけて髪を後ろで一つに束ねた、長身の静香の執事はにっこり笑って振り返った



「なんでございましょう。」

「執事のお仕事で一番必要なものってなんですか?」

< 167 / 214 >

この作品をシェア

pagetop