幸せの契約
私の手…?


見ると赤くなり少し腫れていた


「お気持ちはわかりますが、大学には通えるのですからどうか気を沈めてください。
そして、このように自分を安易に傷つけないでください。

私の心が痛みます。」



真剣な瞳に
心のこもった強い口調


私は静かに拳を引き下げた
犬居さんの手が離れる


「今、コーヒーと何か甘いものをお持ちします。
それでも飲みながら、ゆっくり大学のお話をしましょう。」


さっきとは変わって
いつもの穏やかな表情に戻る犬居さん

「わかりました。」

私はゆっくりソファに腰を下ろした


犬居さんはそれをみて安心したかのように微笑む


「では、少々お待ちくださいませ。

失礼致します。」


静かに部屋を出ていった


あんな真剣な犬居さん初めて見た…


私の手を心配していた


“私の心が痛みます”


…かぁ


そんな風に言ってもらうのは初めてだ
< 40 / 214 >

この作品をシェア

pagetop